英単語ゲームを授業や宿題で使うなら、小テストの代わりにするのではなく、小テストまでに「思い出す回数」を増やす場として置き、理解の確認は別に行うのが扱いやすい形です。ゲームの中で正解できたことと、日を空けても書けることは同じではないからです。
この記事は授業の組み立て方の提案です。RandaWorksが学校で実施して効果を測った実践報告ではありません。具体例として当サイトのエイタンギアを紹介しますが、ほかの教材やゲームより優れていると比べた結果ではなく、エイタンギアそのものの学習効果も検証していません。
歴史など教科を問わない授業設計の考え方は、授業で歴史ゲームを使うにはにまとめています。ここでは英単語と小テストに絞ります。
1. 先に「どの語を、いつまでに」を決める
最初に決めるのは、使うゲームではなく範囲と期日です。
| 決めること | 例 | 決めておく理由 |
|---|---|---|
| 範囲 | 教科書の単元の新出語、小テストの30語 | ゲーム側の教材と授業の範囲がずれると、練習量が多くても小テストにつながりにくい |
| 期日 | 来週の小テスト、学期末の定期テスト | 覚えていてほしい期間によって、復習の間隔の考え方が変わる |
| 形式 | 和訳から綴りを書く、英文の空欄に入れる | 練習と確認で求める答え方をそろえるか、あえて変えるかを決められる |
学年や検定の級に合わせた単語集をそのまま使う方法もあります。ただ、教科書や小テストの範囲と一致するとは限りません。範囲を自分で入力できるか、入力できる語数に上限があるかを確かめておきます。
2. 研究から言えることと、その限界
思い出す練習は、読み直しより後で効いた
RoedigerとKarpickeの2006年の実験では、学生が文章を学んだあと、読み直す条件とテストを受ける条件を比べました。5分後の最終テストでは読み直しの方が成績がよく、2日後と1週間後ではテストを受けた条件の方が多く思い出せました。読み直した学生は、覚えている自信も高めていました。
英単語により近いのは、KarpickeとRoedigerの2008年の実験です。外国語の単語を学ぶ課題で、いったん正しく答えられた語について、その後も学習を続けるか、テストを続けるかを変えました。正答後の学習の繰り返しは遅延再生に影響せず、テストの繰り返しは大きくプラスに働きました。一度言えた語でも、思い出す機会を残す意味があります。
ゲームの設計に移す考え方は、検索練習をゲームにするで詳しく扱っています。
復習の間隔は、テストまでの期間で変わる
Cepedaらの2006年のレビューは、184本の論文にある317件の実験を集め、学習の間隔と、最後のテストまでの期間が一緒に成績へ関わることを示しました。2008年の実験では1,350人を超える参加者が事実を学び、復習の間隔と最終テストまでの期間を変えています。よい復習間隔はテストまでの期間が長いほど長くなり、1週間後のテストでは期間の約20〜40%、1年後では約5〜10%が目安になりました。
来週の小テストと、学年末まで覚えていてほしい語では、同じ予定表を使う必要はありません。ただし、これらはゲームを使った実験ではなく、参加者や教材も学校の授業とは条件が異なります。比率をそのまま宿題の日程に当てはめず、「期日が遠いほど、復習も間隔を空けて入れる」という方向として使います。詳しくは間隔反復をゲームにするを参照してください。
選択式なら、答えの確認までを一組にする
選択式のクイズは手軽ですが、誤った選択肢を選ぶと、その誤りが後まで残ることがあります。ButlerとRoedigerの2008年の実験では、選択式テストの後に正答を示すフィードバックを与えると、与えない条件より後のテストでの正答が増え、誤った選択肢を答える割合が減りました。ゲームでもクイズでも、答えを確かめる場面を省かないようにします。選択肢の作り方は四択クイズは誤答も記憶させるにまとめています。
続けたことと、覚えたことは分けて見る
ポイントや連続記録で練習量が増えても、それだけで理解が深まったとは言えません。ゲーミフィケーションの研究でも、学習の成果、意欲、行動は別々に扱われています。読み方はゲーミフィケーションのメタ分析をどう読むか、順位や競争を入れるときの注意はDuolingoとKahoot!の比較を参照してください。
3. 授業と宿題の流れの例
以下は研究で確かめられた手順ではなく、試すための例です。時間や回数は、学年、端末、生徒の入力の速さに合わせて変えてください。
授業の最初の10分
- 今日の範囲と、ゲームで練習する語を示す(1分)。
- 各自で練習する(6分)。最初の数回は操作に時間がかかる前提で、語数を少なめにする。
- ゲームを閉じ、和訳を見て綴りを書く問題を3語だけ解く(3分)。
3の確認は、ゲームを使わない形にします。ゲーム内でヒントを見ながら入力できた語と、何も見ずに書ける語を分けるためです。
宿題として出す
宿題では「何分遊ぶ」より「どの範囲を、何回に分けて練習するか」を伝えます。たとえば小テストの3日前と前日に分けて練習する、といった形です。間隔の研究からは、同じ日にまとめて繰り返すより、日を分けて思い出す方向が考えられます。ただし、最適な日数は範囲や期日で変わります。
家庭の端末や通信環境は生徒によって違います。ゲームを使えない場合に同じ範囲を練習できる紙の単語リストも用意しておくと、宿題の公平さを保ちやすくなります。
小テストのあと
小テストで間違えた語を、次の練習範囲に入れ直します。正解した語も、学期末まで覚えていてほしいなら、間隔を空けてもう一度出します。
4. 無料の英単語ゲームを選ぶ前の確認表
授業で使う前に、教員が学校の端末で一度通して確かめます。右の列は、具体例としてエイタンギアのブラウザ版を2026年10月5日時点の実装で確認した内容です。
| 確認する点 | 確かめる理由 | エイタンギアの場合 |
|---|---|---|
| アカウント | 登録や保護者の同意が必要か | ログイン・アカウント登録は不要。URLを開いて始める |
| 端末と回線 | 学校の端末・回線で起動できるか | WebGL 2とWebAssemblyに対応したブラウザが必要。初回は通常約25MBを読み込む。ChromebookやiPadでの動作は運営側で未確認 |
| 範囲 | 授業の語を練習できるか | 学年・英検・TOEIC・熟語の19教材から選べるほか、自分で範囲を作れる(1件100語まで・20件まで) |
| 記録の保存先 | どこに保存され、誰が見られるか | 端末のブラウザ内に保存し、学習記録はサーバーへ送らない。先生がまとめて見る機能や端末間の同期はない |
| 入力される情報 | 名前などを入力させるか | 遊ぶために名前やメールアドレスの入力は不要 |
| 計測と表示 | 解析や外部への案内があるか | サイトのアクセス解析で大まかな利用状況を記録する場合がある(入力した文字・単語・英文・セーブ内容は含まない)。iPhoneアプリ「タンレン」の案内がある |
| 音 | 教室で音が出るか | 音が出る。設定でミュートできる |
ほかのサービスを使う場合も、同じ表で確認できます。利用条件や機能は更新で変わるため、授業の直前にも公式の説明を見直してください。計測の詳細はプライバシーポリシーに記載しています。
5. エイタンギアで小テストの範囲を練習する手順
エイタンギアは、和訳を手がかりに英単語の綴りを入力して敵に攻撃するタイピングRPGです。小テストの範囲を練習させる場合は、次の順で進めます。
- 生徒に
https://www.randaworks.com/eitan-gear/play/を共有する。紹介ページhttps://www.randaworks.com/eitan-gear/から入っても同じゲームを起動できる。 - 生徒がスタート画面の「自分の教材で学ぶ」を選び、単語一覧か英文から範囲を作る。
- 対象の語と意味を確認し、範囲に名前を付けて保存する。
- 「練習する」で6語ずつ練習する。範囲全体を一巡したいときは「全範囲を確認」を使う。
注意点もあります。作った範囲はその端末のブラウザに保存されるため、先生が作った範囲をURLで配ることはできません。各自が同じ単語一覧を入力する必要があります。意味は収録済みの教材から表示するので、収録されていない語を含む単語一覧は、直すまで保存できません。
共用の端末で同じブラウザを使うと、前に使った人の記録の続きになります。ブラウザのデータを削除する設定の端末では、記録が残りません。練習の記録を提出させたいときは、結果画面や「冒険者カード」を見せてもらうなど、方法を先に決めておきます。
6. 評価は小テストで行い、ゲームの記録は練習の目安にする
ゲーム内のレベルや獲得したゴールドを成績に入れると、範囲外の語を進めた生徒や、入力が速い生徒が有利になります。評価は小テストなど授業で決めた形で行い、ゲームの記録は練習量の目安として扱う方が、何を測っているかが明確です。
ゲームの順位や記録をクラス全体に掲示することも、慎重に考えます。点が伸びない生徒が、何を間違えたかを確かめる前に練習をやめてしまうかもしれません。見るなら、「前はヒントを見た語を、今回は自分で書けたか」のような、本人の変化にします。
参考資料
- Roediger, H. L., & Karpicke, J. D. (2006). Test-Enhanced Learning: Taking Memory Tests Improves Long-Term Retention
- Karpicke, J. D., & Roediger, H. L. (2008). The Critical Importance of Retrieval for Learning
- Cepeda, N. J., et al. (2006). Distributed Practice in Verbal Recall Tasks: A Review and Quantitative Synthesis
- Cepeda, N. J., et al. (2008). Spacing Effects in Learning: A Temporal Ridgeline of Optimal Retention
- Butler, A. C., & Roediger, H. L. (2008). Feedback Enhances the Positive Effects and Reduces the Negative Effects of Multiple-Choice Testing
