中学生がChatGPTやGeminiを家庭学習に使うなら、「答えを出してもらう道具」ではなく「ヒント・採点・説明をもらう相手」として使うのが現実的です。利用には年齢の条件があり、OpenAIの利用規約は13歳以上かつ18歳未満は保護者の許可を、GoogleはGeminiアプリの個人利用に13歳以上(日本の場合)を求めています。文部科学省のガイドラインも、出力をそのまま提出することや、真偽を確かめずに使うことを避けるよう求めています。
2026年9月には、オーストラリアの塾が「塾代を払うよりGeminiやChatGPTを使ってほしい」と保護者に案内して閉鎖するというニュースが日本でも広く読まれ、GIGAZINEの2026年9月のアクセス解析では人気記事の3位に入りました。この記事では、その報道の中身を確認したうえで、利用条件、塾の代わりになる範囲とならない範囲、使い方の型、1週間の組み合わせ例、注意点を順に整理します。
話題の背景:塾が「AIを使って」と案内して閉鎖した
GIGAZINEが2026年9月28日に報じた記事によると、オーストラリア・シドニーの教育会社Dymocks Educationは、運営する塾「Dymocks Tutoring」と「Talent 100」を9月27日で終了しました。会社は、多くの生徒がAIから低コストで役に立つ説明を得られるようになった今、問われるのは「助けを得られるか」ではなく「AIをうまく使えるか」だと説明し、家計が厳しい保護者には塾代を払うよりGeminiやChatGPTを使うよう案内したとされています。
同じ記事は、CEOのMark Buckland氏が豪州紙Australian Financial Reviewに対し、塾の授業料は1科目1学期あたり800〜900豪ドルで、AIは月30豪ドル程度で使えると述べたこと、そのうえで人の講師の方が優れていると認めたことも伝えています。業界団体の代表は閉鎖を予想外だとし、別の塾の経営者はシドニー周辺で1学期に約8,000人が通塾していると述べ、シドニー大学の教育研究者は、生徒はAIに直接答えを求めがちだが人の講師は段階的に導く、と指摘しています。
つまり、この話は「AIが塾に勝った」という話ではなく、費用の差を理由に一社が撤退し、その経営者自身が人の指導の優位を認めている話です。日本の塾の話でもありません。GIGAZINEが参照した同社のFAQページは、2026年10月26日時点では会社の問い合わせページに転送されて読めず、豪州紙の原文は有料のため読んでいません。
使う前に確認する利用条件(2026年10月26日確認)
OpenAIの利用規約(2026年1月1日発効)は、「Minimum age」の項で、サービスを使うには13歳以上または国が定める同意年齢以上であること、18歳未満の場合は親または法定保護者の許可が必要であることを定めています。また、アカウントの認証情報を他人と共有してはならないとも書かれています。保護者のアカウントを子どもに使わせるのではなく、13歳以上なら本人のアカウントを作り、ヘルプセンターの手順でペアレンタルコントロールを設定して保護者のアカウントと連携する、という形が規約に沿っています。連携しても、保護者に子どもの会話内容は見えません。
Googleのヘルプは、個人または学校のGoogleアカウントでGeminiアプリを使うには13歳以上(または国ごとの該当年齢)であることを求めています。Googleアカウントの年齢要件のページには国別の一覧があり、日本は載っていないため、「一覧にない国は13歳」という規定が当てはまります。ファミリーリンクで管理している13歳未満の子どもについては、保護者が設定でGeminiアプリの利用をオン・オフでき、子どもが初めて使ったときに保護者へメールが届きます。ただし同じヘルプは、ファミリーリンクで管理されたアカウントではGeminiのウェブ版は使えないとも書いており、アプリとウェブで扱いが異なります。
文部科学省のガイドラインが示す考え方
文部科学省は2024年12月26日に「初等中等教育段階における生成AIの利活用に関するガイドライン(Ver.2.0)」を公表しました。学校と教育委員会向けの文書ですが、家庭で使うときの基準としても参考になります。本文を読むと、次の点が繰り返し出てきます。
- 最後は人間が判断する。 生成AIを有用な道具になり得るものと捉え、出力を参考の一つとして、最後は人間が判断し責任を持つ。
- 利用規約を守る。 年齢制限や保護者の同意の必要性など、提供者が定める最新の利用規約を確認し、遵守する。児童生徒に使わせる場合は、必要に応じて事前に保護者の理解を十分に得る。
- そのまま提出しない。 コンクールの作品やレポートについて、生成AIの出力をそのまま自己の成果物として提出することは、評価基準や応募規約によっては不適切または不正な行為に当たり、活動を通じた学びが得られず自分のためにならない。
- 真偽を確かめる。 ハルシネーションやバイアスがあることを理解し、情報の真偽を確かめる(ファクトチェック)。発信者、時期、内容、他の情報との比較など複数の方法を組み合わせる。
- 個人情報を入れない。 プロンプトに氏名や写真などの個人情報を入力させない。
- テストでは使わない。 定期考査や小テストで使わせることは、学習の進捗や成果を把握するという目的に合わない。
ガイドラインは、学校外で児童生徒が生成AIを使う可能性も踏まえ、保護者に周知し理解を得ることが必要だとも書いています。家庭での利用は学校のルールと切り離せないので、まず学校の方針を確認してください。
塾の代わりになる範囲、ならない範囲
生成AIが得意なのは、言葉で説明する仕事です。「比例と反比例の違いを、お小遣いの例で説明して」「この英文を、中学2年生が使う単語だけで言い直して」のような頼み方ができます。逆に、計算の答えは信用しないで検算するのが基本です。桁の多い計算や分数の計算で間違えることがあり、間違いが自然な文章で返ってくるため気づきにくいからです。計算練習は、プリントで手を動かし、AIには「なぜそう解くのか」の説明を頼む、という分担にします。
最新の入試情報も弱点です。生成AIの知識には区切りの時期があり、ウェブ検索機能があっても古い情報を混ぜることがあります。志望校の試験日、科目、配点、出願方法は、必ず学校や教育委員会の公式ページで確認してください。
使い方の型:答えを言わせない頼み方
同じ質問でも、頼み方で学びの量が変わります。文部科学省のガイドラインが「自分の判断や考えが重要であることを認識させる」使い方を求めているのと同じ方向です。そのまま貼って使える型を挙げます。
「ヒントだけ」「採点と原因」の型は、答えを見る前に自分で思い出す時間を確保するための工夫です。思い出す練習が記憶に残りやすいことは、検索練習をゲームにするで研究を紹介しています。「自己説明」の型は、自分の言葉で理由を説明することで理解が深まる学び方で、自己説明をゲームにするで扱っています。
歴史や理科の用語をAIに聞くときは、年号や人名を教科書や辞典で確かめる手順を決めておきます。生成AIの回答を「出典」ではなく「検索語の候補」として扱う方法は、生成AIで日本史を調べる|出典と年代を検証する手順にまとめています。
1週間の使い方例(教材との組み合わせ)
生成AIだけで勉強を組むより、手を動かす教材と組み合わせる方が、答えを写す使い方になりにくくなります。RandaWorksの無料教材を使った1週間の例です。1日の目安は30〜40分で、AIに向かう時間は10分程度に抑えます。
- 月曜(数学):中1数学の計算プリント(小学生なら小学生の計算プリント)を1枚解いて自分で答え合わせ。間違えた1問だけ、AIに「ヒントだけ」の型で聞く。
- 火曜(英語):英単語ゲームエイタンギアで10分練習したあと、その日の単語を使って英文を1〜2文書き、「英作文」の型で直してもらう。
- 水曜(社会):幕末の流れを因果でつかむのような解説を読み、「なぜこの出来事が次の出来事につながったのか」をAIに自分の言葉で説明して「自己説明」の型で穴を探す。年号は記事の出典で確認する。
- 木曜(国語):古典タンレンで古文の活用や漢文の句形を確認し、分からない語を「中学生向けに言い直して」と頼む。
- 金曜(タイピングと振り返り):タイプクエストで10分。週に出てきた「分からなかったこと」を3つ書き出し、「類題」の型で確認問題を作らせる。
- 土曜(テスト形式):金曜に作った問題を、AIを閉じて時間を決めて解く。終わってから「採点と原因」の型で見てもらう。
- 日曜:休むか、間違えた問題だけをもう一度解く。
この組み合わせは当サイトの提案で、学力の向上を測った結果ではありません。学校の宿題がある日は、宿題を優先してください。
注意点
- 間違いを前提にする。 ガイドラインが言うとおり、ハルシネーションは完全には防げません。計算は検算し、事実は教科書や辞典で確かめます。流暢な文章ほど疑う習慣をつけます。
- 宿題を写さない。 出力をそのまま提出すると、不正と判断されることがあるだけでなく、学びが残りません。「ヒントだけ」「採点と原因」の型を使い、自分で書いた部分を残します。
- 個人情報を入れない。 氏名、学校名、顔写真、住所、成績表の画像などは入力しません。ChatGPTのペアレンタルコントロールやGeminiのファミリーリンクには、会話をモデルの改善に使わない、アクティビティを保存しない設定があります。
- 先に自分で考える時間を決める。 問題を見てすぐAIに聞く習慣がつくと、思い出す練習の機会がなくなります。「5分考えてから聞く」のように時間を決めます。
- 学校のルールを確認する。 ガイドラインは学校ごとの判断を認めており、使い方の方針は学校によって違います。保護者から学校へ確認してください。
- アカウントは規約どおりに。 保護者のアカウントを共用するのではなく、13歳以上なら本人のアカウントを作り、保護者の許可と設定のうえで使います。
まとめ
- 中学生がChatGPT・Geminiを使うには13歳以上が条件で、ChatGPTは18歳未満に保護者の許可を求めている。13歳未満のGeminiは保護者がファミリーリンクで管理する。
- 文部科学省のガイドラインは、最後は人間が判断する、出力をそのまま提出しない、真偽を確かめる、個人情報を入れない、利用規約を守る、という考え方を示している。
- 生成AIは説明・別解・類題・英作文の添削に向き、計算の確実さ・入試情報・計画の強制力・厳密な採点・人との関係は弱い。塾を閉じた会社の経営者も、人の講師の優位を認めている。
- 「ヒントだけ」「採点と原因」「自己説明」の型で、自分で考える部分を残す。手を動かす教材と組み合わせ、AIに向かう時間は短く区切る。
資料について
- OpenAIの利用規約は、ページに「2026年1月1日発効」と表示されているものを読みました。ペアレンタルコントロールのヘルプは英語版を読み、設定項目の名称は記事執筆時のものです。
- Googleのヘルプには、ファミリーリンクで管理する13歳未満のアカウントでGeminiアプリをオンにできるという記述と、ファミリーリンクで管理されたアカウントではGeminiウェブ版を使えないという記述が併存しています。アプリとウェブで扱いが違うと読みましたが、実際の利用可否は各家庭のアカウント設定で確認してください。
- 文部科学省のガイドラインは学校・教育委員会向けの文書で、家庭学習を直接の対象にはしていません。考え方を参考にする形で引用しました。
- 塾閉鎖の報道は、GIGAZINEの記事が引く会社のFAQとAustralian Financial Reviewの記事に基づきます。FAQページは2026年10月26日時点で閲覧できず、豪州紙の原文は読んでいません。
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参考資料
- OpenAI「Terms of Use」(2026年1月1日発効)
- OpenAI Help Center「Parental controls for ChatGPT」
- Google「Gemini アプリへのログインに必要なもの」
- Google「ファミリー リンクで管理しているお子様の Gemini アプリ」
- Google「Age requirements on Google Accounts」
- 文部科学省「初等中等教育段階における生成AIの利活用に関するガイドライン(Ver.2.0)」(2024年12月26日)
- 同ガイドライン本文(PDF)
- GIGAZINE「「塾代を払うよりChatGPTやGeminiを使って」と保護者に勧め、塾が教室を閉鎖へ」(2026年9月28日)
- GIGAZINE「2026年9月のアクセス解析」(2026年10月24日)
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