古文の係り結び|ぞ・なむ・や・か・こその結びと意味、省略・流れの見分け方

古文の係り結びは、係助詞「ぞ・なむ・や・か」があれば文末が連体形、「こそ」があれば已然形になる決まりです。強意と疑問・反語の訳し分け、結びの省略と流れ、「こそ〜已然形、」の逆接、「もぞ・もこそ」「やは・かは」を、徒然草・古今集などの例文と練習問題10問で確認できます。

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古文の係り結びは、文中に係助詞「ぞ・なむ・や・か」があれば文末が連体形、「こそ」があれば文末が已然形になる決まりです。「ぞ・なむ・こそ」は強意、「や・か」は疑問・反語を表し、結びが書かれない「結びの省略」と、文が下に続いて結ばない「結びの流れ」も押さえておくと、読解で係り結びを見落としにくくなります。

係り結び 早見表

係助詞意味結び例(実際の古文)
ぞ強意連体形風の音にぞおどろかれぬる(『古今和歌集』)
なむ(なん)強意連体形讃岐造麿となんいひける(『竹取物語』)
や疑問・反語連体形浪とともにや秋は立つらむ(『古今和歌集』)
か疑問・反語連体形いづれの山か天に近き(『竹取物語』)
こそ強意已然形怪しうこそ物狂ほしけれ(『徒然草』序段)

基本の5語のほかに、読解でよく問われる形をまとめます。

形結び・形意味・訳例(実際の古文)
こそ〜已然形、(文が続く)已然形のあとに読点逆接(〜けれども)中垣こそあれ、ひとつ家のやうなれば(『土佐日記』)
もぞ/もこそ連体形/已然形懸念(〜したら大変だ・困る)雨もぞふる(『徒然草』第百四段)
やは/かは連体形反語が多い(〜か、いや〜ない)香やはかくるる(『古今和歌集』)
結びの省略結びの語が書かれない「あり」「言ふ」などを補う心すべきことにこそ。(『徒然草』第八十九段)
結びの流れ(結びの消滅)接続助詞などで下に続き、結ばない係り結びが成立しない耳鼻こそ切れ失すとも(『徒然草』第五十三段)

この記事の古文は、Wikisource の公開本文をもとにしています。旧字体を新字体に改め、校注者の注記(〔 〕内)を省き、くり返し記号は仮名に開きました。ふりがなが付いた漢字は、読みを仮名で示した箇所があります。和歌は読みやすいように漢字と濁点を補っています。

係り結びとは

文中の係助詞と、それに呼応して形が変わる文末の活用語の関係を、係り結びといいます。係助詞を係り、形が変わる文末の語を結びと呼びます。ふつう文末は終止形で言い切りますが、係助詞があると次のように変わります。

  • 文中に「ぞ」「なむ」「や」「か」があると、文末は連体形
  • 文中に「こそ」があると、文末は已然形

「結び」は、地の文の文末だけでなく、会話文や心の中の言葉が終わるところ(引用の「と」の直前)にも現れます。

結びの形を確かめる手順

  1. 文中の係助詞を探す:「ぞ・なむ(なん)・や・か・こそ」と、「もぞ・もこそ・やは・かは」の形です。
  2. その文の終わり(会話文なら「」の終わり)を見る:最後の活用語が結びです。助動詞が付いていれば、いちばん下の助動詞が結びになります。
  3. 活用形を確かめる:連体形か已然形かを見ます。四段動詞のように終止形と連体形が同じ形の語は、形だけでは分かりません。
  4. 結びが見当たらないとき:結びの語が書かれていなければ「結びの省略」、接続助詞などで下に続いていれば「結びの流れ」です。

結びになりやすい助動詞と形容詞の形を挙げます。助動詞の活用全体は古文の助動詞 活用表と接続一覧で確認できます。

語終止形(ふつうの言い切り)連体形(ぞ・なむ・や・か)已然形(こそ)
けり(過去)けりけるけれ
き(過去)きししか
ぬ(完了)ぬぬるぬれ
つ(完了)つつるつれ
たり(完了・存続)たりたるたれ
む(推量・意志)むむめ
らむ(現在推量)らむらむらめ
けむ(過去推量)けむけむけめ
ず(打消)ずぬね
なり(断定)なりなるなれ
ク活用の形容詞(高し)高し高き高けれ
シク活用の形容詞(物狂ほし)物狂ほし物狂ほしき物狂ほしけれ

形容詞の活用は古文の形容詞 活用表、動詞の活用形の使われ方は古文の動詞 活用の種類9つと見分け方にまとめています。

強意の「ぞ」「なむ」「こそ」

「ぞ」「なむ」「こそ」は、上の語を取り立てて強く示します。現代語に訳すときは、強調を訳に出さないことが多い語です。強さについて、デジタル大辞泉は、「ぞ」は「こそ」より弱く「なむ」より強く、「なむ」は「こそ」や「ぞ」より語勢が弱い、といわれると説明しています。

「ぞ」→連体形

秋来ぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞおどろかれぬる(『古今和歌集』巻四・秋歌上、藤原敏行)

  • ぞを受けて、完了の助動詞「ぬ」が連体形ぬるになっています。「風の音にはっと気づかされた」と訳し、「ぞ」の強調は訳に出しません。

聞きしよりもましていふかひなくぞこぼれ破れたる。(『土佐日記』、京の家に帰り着いた場面)

  • ぞを受けて、完了・存続の助動詞「たり」が連体形たるになっています。「聞いていた以上に、言いようもなくひどく壊れている」。

「なむ」→連体形

名をば讃岐造麿となんいひける。(『竹取物語』冒頭)

  • なんは「なむ」と同じ係助詞です。結びは過去の助動詞「けり」の連体形ける。「名を讃岐造麿といった」。

「夜半うち過ぐるほどになむ、絶えはてたまひぬる」(『源氏物語』桐壺)

  • なむを受けて、完了の「ぬ」が連体形ぬる。デジタル大辞泉が「なむ」の用例に挙げている文です。

精選版 日本国語大辞典は、「なむ」について、和歌にはほとんど用いられないこと、結びに「む」「らむ」「けむ」「まし」といった推量の助動詞が原則として来ないこと、結びの省略が他の係助詞より目立つことを挙げています。会話文や物語の地の文で多く使われる語です。

「こそ」→已然形

つれづれなるままに、日ぐらし硯に向ひて、心に移り行くよしなしごとを、そこはかとなく書きつくれば、怪しうこそ物狂ほしけれ。(『徒然草』序段)

  • こそを受けて、シク活用の形容詞「物狂ほし」が已然形物狂ほしけれになっています。「妙に心が乱れる気持ちがする」。

いでや、この世に生れては、願はしかるべきことこそ多かめれ。(『徒然草』第一段)

  • こそを受けて、推定の助動詞「めり」が已然形めれ。「多かめれ」は「多かるめれ」が撥音便になり、「ん」が書かれなかった形です。

疑問・反語の「や」「か」

「や」「か」は疑問か反語を表し、結びは連体形です。

  • 疑問:「〜か」「〜だろうか」と、分からないことを問う
  • 反語:「〜だろうか、いや〜ない」と、問いの形で反対の内容を強く言う

河風の涼しくもあるかうち寄する浪とともにや秋は立つらむ(『古今和歌集』巻四・秋歌上、紀貫之)

  • やを受けて、現在推量の助動詞「らむ」の連体形らむ(終止形と同じ形)で結びます。「打ち寄せる波といっしょに秋はやって来るのだろうか」という疑問です。

「いづれの山か天に近き。」ととはせ給ふに(『竹取物語』、かぐや姫が去ったあとの帝の問い)

  • かを受けて、ク活用の形容詞「近し」が連体形近きになっています。「どの山が天に近いか」という疑問です。

たとひ耳鼻こそ切れ失すとも、命ばかりはなどか生きざらむ(『徒然草』第五十三段)

  • 「などか生きざらむ」のかを受けて、推量の助動詞「む」の連体形むで結びます。「どうして生きないことがあろうか、いや、きっと生きるだろう」という反語です。前半の「こそ」については「結びの流れ」で説明します。

疑問と反語の見分け方

疑問か反語かは文脈で決まります。次の点を目安にしてください。

  • 「〜だろうか、いや〜ない」と打ち消しを続けて、前後の内容と合うなら反語
  • 「やは」「かは」の形は反語になることが多い(下で説明します)
  • 「など(か)」「いかで(か)」「誰か」などの疑問語に、推量の「む」「べき」などが続く文は反語になりやすい。当サイトの整理で、決め手ではなく目安です

「や」と「か」は、どちらも疑問・反語を表しますが、使われ方に違いがあります。精選版 日本国語大辞典は、中古以前は疑問語(いづれ・何・誰など)の下には「や」を用いず「か」を用いたと説明しています。「いづれの山か」「何事か」のように、疑問語のあとに来るのは「か」です。

「やは」「かは」は反語が多い

「や」「か」に係助詞「は」が付いた「やは」「かは」も、文中では連体形で結びます。精選版 日本国語大辞典は、「やは」は反語の用法が大半で疑問の例はきわめて少ないとし、「かは」も「か」より反語を表す傾向が強いと説明しています。

春の夜の闇はあやなし梅の花色こそ見えね香やはかくるる(『古今和歌集』巻一・春歌上、凡河内躬恒)

  • やはを受けて、下二段動詞「かくる(隠る)」が連体形かくるるになっています。「香りは隠れるだろうか、いや隠れない」という反語です。
  • 前半の「色こそ見えね」は、次の節で扱う「こそ〜已然形、」の逆接です。

逢ふことも涙に浮かぶわが身には死なぬ薬も何にかはせむ(『竹取物語』、帝の歌)

  • かはを受けて、推量の「む」の連体形むで結びます。「(かぐや姫に)会うこともできず涙に浮かんでいるわが身には、不死の薬も何になろうか、いや何にもならない」という反語です。

文末に置かれた「かは」も反語になることが多い形です。『徒然草』第百三十七段の書き出し「花は盛りに、月は隈なきをのみ見るものかは。」は、「桜は満開のときだけ、月は曇りのないときだけを見るものだろうか、いやそうではない」という反語です。

「こそ〜已然形、」は逆接になる

「こそ」の結びの已然形で文が終わらず、読点のあとに文が続くときは、「〜けれども」と逆接で訳します。高校向けの文法書『古典読解のための 標準古典文法』は、この用法を「逆接強調」とも呼んでいます(阿久津智「古典文法学習における係り結び」による)。

文末で結ぶ「こそ」
あとに続く「こそ」
形
文末で結ぶ「こそ」こそ〜已然形。
あとに続く「こそ」こそ〜已然形、〜
意味
文末で結ぶ「こそ」強意
あとに続く「こそ」逆接(〜けれども)
例
文末で結ぶ「こそ」怪しうこそ物狂ほしけれ。
あとに続く「こそ」中垣こそあれ、ひとつ家のやうなれば
訳
文末で結ぶ「こそ」妙に心が乱れる気持ちがする
あとに続く「こそ」中垣はあるけれども、一軒の家のようなので
「こそ」の結びと逆接(例はいずれも上で確かめた実際の古文)

家を預けたりつる人の心も荒れたるなりけり。中垣こそあれ、ひとつ家のやうなればのぞみて預れるなり。(『土佐日記』、京の家に帰り着いた場面)

  • こそあれ:「あれ」はラ変「あり」の已然形で、読点のあとに文が続きます。「(隣との間に)仕切りの垣はあるけれども、一軒の家のようなものだから、(向こうから)望んで預かったのだ」。

春の夜の闇はあやなし梅の花色こそ見えね香やはかくるる(『古今和歌集』巻一)

  • 色こそ見えね:「ね」は打消の助動詞「ず」の已然形です。「(梅の花の)色は見えないけれども、香りは隠れるだろうか、いや隠れない」と、後半へ逆接でつながります。

人品容貌こそ生れつきたらめ、心はなどか、賢きより賢きにも、うつさば移らざらむ。(『徒然草』第一段)

  • こそ〜たらめ:「め」は推量の助動詞「む」の已然形です。「身分や容貌は生まれつきのものだろうが、心はどうして、より賢いほうへ移そうとすれば移らないことがあろうか(いや、移る)」。後半の「などか〜ざらむ」は反語です。

「もぞ」「もこそ」は懸念を表す

係助詞「も」に「ぞ」「こそ」が重なった「もぞ」「もこそ」は、多くの場合、よくない事態を予想して心配する気持ちを表します。「〜したら大変だ」「〜すると困る」と訳します。結びは、「もぞ」が連体形、「もこそ」が已然形です。

「門よくさしてよ。雨もぞふる」(『徒然草』第百四段)

  • もぞを受けて、四段動詞「ふる(降る)」の連体形で結びます(終止形と同じ形)。「門をしっかり閉めておきなさい。雨が降ったら困る」。

いづ方へかまかりぬる。いとをかしう、やうやうなりつるものを。烏などもこそ見つくれ(『源氏物語』若紫)

  • もこそを受けて、下二段動詞「見つく」が已然形見つくれになっています。逃げた雀の子について「烏などが見つけたら大変だ」と心配しています。
  • 前の「いづ方へかまかりぬる」は、かを受けて完了の「ぬ」が連体形「ぬる」になった疑問の文です(「どこへ行ってしまったのか」)。

また推し出して、あはれさるめりと思ひながら、なほ誤りもこそあれと怪しむ人あり。(『徒然草』第百九十四段)

  • もこそを受けて、ラ変「あり」の已然形あれ。「やはり誤りがあったら困る(誤りがあるかもしれない)と疑う人もいる」。

「も」と「ぞ」「こそ」が単に重なっただけで、懸念の意味にならない例もあります。精選版 日本国語大辞典は、懸念の用法のほとんどは将来の事態を危ぶむものだが、期待する例もあると注記しています。

結びの省略

係助詞があるのに、結びの語が書かれていないことがあります。これを結びの省略といいます。省かれた語を補って訳します。

よく出る形補う語の例意味
〜にや。/〜にか。あらむ・ありけむ〜であろうか
〜にこそ。あれ・あらめ〜である
〜とぞ。/〜となむ。言ふ・言ひける・聞く〜ということだ

「にや」「にこそ」の「に」は、断定の助動詞「なり」の連用形です。デジタル大辞泉は、文末の「こそ」のあとでは「あれ」「あらめ」「言はめ」が省かれることが多いと説明しています。

「一人ありかむ身は心すべきことにこそ。」と思ひける頃しも(『徒然草』第八十九段)

  • にこそのあとに「あれ」を補います。「一人で出歩くような身は、用心すべきことである」。

ぼろぼろといふものは、昔はなかりけるにや。(『徒然草』第百十五段)

  • にやのあとに「あらむ」を補います。「ぼろぼろ(虚無僧のような者)というものは、昔はなかったのであろうか」。デジタル大辞泉が、「や」の結びが省略される例として挙げている文です。

桂の木の大きなるがかくるるまで、今も見おくり給ふとぞ。(『徒然草』第百四段の結び)

  • とぞのあとに「言ふ」などを補います。「今でも見送っていらっしゃるということだ」。

結びの流れ(結びの消滅)

係助詞があっても、結ぶはずの語に接続助詞が付くなどして文が下に続くと、連体形・已然形で結ばないことがあります。これを結びの流れ、または結びの消滅といいます。係り結びは成立していないとみます。

「たとひ耳鼻こそ切れ失すとも、命ばかりはなどか生きざらむ」(『徒然草』第五十三段)

  • 「こそ」の結びなら已然形「切れ失すれ」となるところですが、「切れ失す」は終止形のまま、接続助詞「とも」に続いています。「たとえ耳や鼻が切れてなくなっても」。
  • この文は、『標準古典文法』でもこの現象の例として挙げられています(阿久津論文による)。

「守こそおろかに思ひなすとも、我は命を譲りてかしづきて」(『源氏物語』東屋)

  • 「こそ」を受ける「思ひなす」が終止形のまま「とも」に続きます。精選版 日本国語大辞典は、中古以後、「こそ」のあとの逆接を接続助詞「ども」「とも」「に」などで表す例として、この文を挙げています。

「なむ」についても、デジタル大辞泉は、受ける語が接続助詞を伴って下に続く場合は連体形で結ぶとは限らないと説明しています。読解では、係助詞があるのに結びが見つからないとき、省略か流れかを確かめます。下に文が続いていれば流れ、文がそこで終わっていれば省略です。

「なむ」の識別

「なむ」は、係助詞のほかにも3つの形があり、識別問題でよく問われます。上の語の形で見分けます。

「なむ」の正体上に来る形意味・訳例
係助詞体言・連体形・連用形・助詞など強意(文末が連体形)夜半うち過ぐるほどになむ、絶えはてたまひぬる(『源氏物語』桐壺)
終助詞(願望)未然形〜してほしい惟光、とく参らなむ(『源氏物語』夕顔)
完了「ぬ」の未然形+推量「む」連用形きっと〜だろう・〜してしまおう船に乗りなむとす(『土佐日記』)
ナ変動詞の未然形活用語尾+推量「む」「死」「往(去)」〜だろう・〜しよう死なむ(作例)
  • 「惟光、とく参らなむ」は、四段「参る」の未然形「参ら」に付く終助詞で、「惟光が早く参上してほしい」と願う気持ちです。精選版 日本国語大辞典が終助詞「なむ」の用例に挙げています。
  • 「船に乗りなむとす」は、四段「乗る」の連用形「乗り」に付くので、完了「ぬ」の未然形+推量(意志)「む」です。デジタル大辞泉は意志を強める用例に挙げています。
  • 四段動詞は未然形と連用形の形が違うので接続で決まりますが、上一段・上二段・下二段動詞のように未然形と連用形が同じ形の語に付くときは、文脈で判断します。

実際の古文で確かめる

『徒然草』第五十二段「仁和寺にある法師」には、係り結びがまとまって出てきます。石清水八幡宮へ参詣した法師が、山の麓の寺社だけを拝んで帰り、仲間に話す場面です。

「年ごろ思ひつる事果たし侍りぬ。聞きしにも過ぎて尊くこそおはしけれ。そも参りたる人ごとに山へのぼりしは、何事かありけむ、ゆかしかりしかど、神へまゐるこそ本意なれと思ひて、山までは見ず。」とぞいひける。(『徒然草』第五十二段)

  • 尊くこそおはしけれ:「こそ」を受けて、過去の助動詞「けり」が已然形「けれ」。「聞いていた以上に尊くいらっしゃった」
  • 何事かありけむ:「か」を受けて、過去推量の助動詞「けむ」の連体形「けむ」。「何があったのだろうか」という疑問を、話の途中に差し挟んでいます
  • 神へまゐるこそ本意なれ:「こそ」を受けて、断定の助動詞「なり」が已然形「なれ」。「神へお参りすることこそが本来の目的だ」
  • とぞいひける:「ぞ」を受けて、「けり」が連体形「ける」。「と言った」

一つの段の中で、連体形と已然形の結びを両方確かめられます。「なり」の識別も合わせて練習したいときは、古文「なり」の識別の例文も使えます。

資料で分かれる点

  • 「結びの流れ」と「結びの消滅」の呼び方:同じ現象を、文法書によって「結びの流れ」とも「結びの消滅」とも呼びます。阿久津智「古典文法学習における係り結び」(『拓殖大学語学研究』)によると、『標準古典文法』は「結びの消滅」を見出しにして「『結びの流れ』ともいう」と添え、時枝誠記『日本文法 文語編』は「係結の法則の解消」、明治期の大槻文彦は「転結」と呼んでいます。この記事は両方の名を並べて示しました。
  • 「は」「も」を係り結びに含めるか:日本大百科全書(ニッポニカ)と世界大百科事典は、係助詞「は」「も」と文末の終止形の呼応も係り結びに含めて説明しています。百科事典マイペディアは「ぞ・なむ・や・か」と「こそ」を挙げ、「は」「も」の終止形の結びを含める立場もある、としています。阿久津論文が引く『標準古典文法』は、「ぞ・なむ・や(やは)・か(かは)」と「こそ」の呼応を「係り結びの法則」とし、「は」「も」は「原則として終止形で結ぶもの」として別に挙げています。この記事も、結びの形が変わる5語を中心に扱いました。
  • 文末の「や」「か」「かは」:文末に置かれた「や」「か」を、係助詞の文末用法とみるか終助詞とみるかは、辞典で扱いが分かれます。デジタル大辞泉は「や」の文末用法を係助詞に入れつつ、終助詞とする説もあると記しています。
  • 「こそ」の結びの例外:精選版 日本国語大辞典は、上代には形容詞が「こそ」を連体形で受けた例があり、中古から「こそ」に已然形で結ばない破格の例が見え始めると説明しています。学校文法では「こそ→已然形」で覚えて問題ありません。
  • 係り結びの衰え:世界大百科事典は、平安時代末に動詞の終止形と連体形が同じ形になったことで「ぞ・なむ・や・か」の係り結びが衰え、「こそ」の係り結びは室町時代の末まで続いたと説明しています。鎌倉時代以降の文章では、決まりどおりに結ばない例も出てきます。

定期テストや入試の解答は、授業で使う文法書の整理に合わせてください。

練習問題(10問)

答えは各問の「答え」を開いて確認してください。すべて上で確かめた実際の古文です。

問1. 「風の音にぞおどろかれぬる」の係助詞と、その結びの語を答え、結びの活用形を答えなさい。

答え係助詞は「ぞ」、結びは「ぬる」(完了の助動詞「ぬ」の連体形)

「ぞ」は連体形で結ぶので、終止形「ぬ」ではなく連体形「ぬる」になっています。

問2. 「怪しうこそ物狂ほしけれ」の「物狂ほしけれ」を文法的に説明しなさい。

答えシク活用の形容詞「物狂ほし」の已然形(係助詞「こそ」の結び)

「こそ」は已然形で結びます。文末ですが、終止形「物狂ほし」ではなく已然形になっています。

問3. 「いづれの山か天に近き」の「か」の意味と、結びの語を答えなさい。

答え疑問。結びはク活用の形容詞「近し」の連体形「近き」

帝が「どの山が天に近いか」と尋ねている場面です。疑問語「いづれ」のあとなので「や」ではなく「か」が使われています。

問4. 「命ばかりはなどか生きざらむ」の「か」は疑問か反語か。現代語訳もしなさい。

答え反語。「命だけはどうして助からないことがあろうか、いや、きっと助かるだろう」

結びは推量の助動詞「む」の連体形です。前に「たとひ耳鼻こそ切れ失すとも」とあり、「耳や鼻はなくなっても命は助かる」と強く言っているので反語です。

問5. 「中垣こそあれ、ひとつ家のやうなれば」を現代語訳しなさい。

答え「仕切りの垣はあるけれども、一軒の家のようなものなので」

「あれ」はラ変「あり」の已然形で、「こそ」の結びです。已然形のあとに読点があって文が続いているので、逆接で訳します。

問6. 「烏などもこそ見つくれ」の「もこそ」の意味を答え、現代語訳しなさい。

答え懸念(よくないことを心配する気持ち)。「烏などが見つけたら大変だ」

結びは下二段動詞「見つく」の已然形「見つくれ」です。逃げた雀の子が烏に見つかるのを心配しています。

問7. 「一人ありかむ身は心すべきことにこそ」のあとに省略されている語を、適切な形で補いなさい。

答えあれ(ラ変「あり」の已然形)

「に」は断定の助動詞「なり」の連用形で、「にこそあれ」の「あれ」が省略されています。「こそ」の結びなので已然形で補います。「用心すべきことである」と訳します。

問8. 「たとひ耳鼻こそ切れ失すとも」では、「こそ」があるのに「切れ失す」が已然形になっていない。その理由を説明しなさい。

答え接続助詞「とも」が付いて文が下に続き、結びが流れている(結びの流れ・結びの消滅)から

文が終わらずに続くため、係り結びが成立していません。「たとえ耳や鼻が切れてなくなっても」と訳します。

問9. 「色こそ見えね香やはかくるる」について、(a)「見えね」の「ね」を文法的に説明し、(b)「やは」の意味を答えなさい。

答え(a)打消の助動詞「ず」の已然形(「こそ」の結び) (b)反語

「色こそ見えね」は已然形のあとに文が続くので逆接で「色は見えないけれども」。「香やはかくるる」は「香りは隠れるだろうか、いや隠れない」です。「かくるる」は下二段動詞「かくる」の連体形で、「やは」の結びです。

問10. 次の「なむ(なん)」を、それぞれ文法的に説明しなさい。(a)「惟光、とく参らなむ」(b)「船に乗りなむとす」(c)「讃岐造麿となんいひける」

答え(a)願望の終助詞 (b)完了の助動詞「ぬ」の未然形+意志の助動詞「む」 (c)強意の係助詞

(a)は四段「参る」の未然形「参ら」に付くので終助詞で、「早く参上してほしい」。(b)は四段「乗る」の連用形「乗り」に付くので「ぬ」+「む」で、「船に乗ってしまおうとする」。(c)は助詞「と」に付き、文末が「けり」の連体形「ける」で結ばれているので係助詞です。

まとめ

  • 「ぞ・なむ・や・か」は連体形、「こそ」は已然形で結ぶ
  • 「ぞ・なむ・こそ」は強意で、訳には出さないことが多い。「や・か」は疑問・反語
  • 疑問語(いづれ・何・など)のあとは「か」。「やは」「かは」は反語になることが多い
  • 「こそ〜已然形、」と文が続けば逆接(〜けれども)
  • 「もぞ」「もこそ」は懸念(〜したら大変だ)
  • 結びが書かれていなければ結びの省略(「あり」「言ふ」などを補う)、接続助詞などで下に続けば結びの流れ(結びの消滅)

係り結びは、結びの活用形が分かることが前提になります。助動詞や形容詞の連体形・已然形があいまいなときは、活用表を先に見直すと解きやすくなります。

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参考資料

よくある質問

6件
古文の係り結びとは何ですか?
文中に係助詞「ぞ・なむ・や・か」があると文末の活用語が連体形になり、「こそ」があると已然形になる決まりです。係助詞を「係り」、形が変わる文末の語を「結び」と呼びます。たとえば『古今和歌集』の「風の音にぞおどろかれぬる」は、「ぞ」を受けて完了の助動詞「ぬ」が連体形「ぬる」になっています。「は」「も」と終止形の呼応も係り結びに含める説明があります。
係助詞の「ぞ・なむ・こそ」と「や・か」は、意味がどう違いますか?
「ぞ」「なむ」「こそ」は強意で、上の語を強く示します。現代語に訳すときは、訳に出さないことが多い語です。「や」「か」は疑問か反語で、「〜か」「〜だろうか」、反語なら「〜だろうか、いや〜ない」と訳します。強意の強さは、「こそ」が最も強く、「ぞ」、「なむ」の順に弱いといわれる、と辞典に説明があります。
疑問と反語はどう見分けますか?
文脈で判断します。「〜だろうか、いや〜ない」と打ち消しを続けて意味が通り、話し手が答えを分かったうえで問いかけているなら反語です。「やは」「かは」は反語になることが多く、「などか」「いかでか」などの疑問語と推量の「む」の組み合わせも反語になりやすい形です。ただし形だけで決まるわけではないので、前後の内容で確かめてください。
結びの省略とは何ですか?何を補えばよいですか?
係助詞があるのに、それを受ける結びの語が書かれていないことです。「にや」「にか」なら「あらむ」(「ありけむ」)、「にこそ」なら「あれ」(「あらめ」)、文末の「とぞ」なら「言ふ」「聞く」などを補って読みます。『徒然草』第八十九段の「心すべきことにこそ」は、「あれ」を補って「用心すべきことである」と訳します。
結びの流れ(結びの消滅)とは何ですか?
係助詞があっても、結ぶはずの語に接続助詞が付くなどして文が下に続くと、連体形や已然形で結ばないことです。『徒然草』第五十三段の「たとひ耳鼻こそ切れ失すとも」は、「こそ」を受ける「切れ失す」が終止形のまま「とも」に続いています。高校の文法書では「結びの流れ」「結びの消滅」のどちらかの名で扱われ、両方を並べて示すものもあります。
「もぞ」「もこそ」はどう訳しますか?
多くは、よくないことが起きるのを心配して「〜したら大変だ」「〜すると困る」と訳します。『徒然草』第百四段の「雨もぞふる」は「雨が降ったら困る」、『源氏物語』若紫の「烏などもこそ見つくれ」は「烏などが見つけたら大変だ」です。結びは「もぞ」が連体形、「もこそ」が已然形です。辞典には、心配ではなく期待を表す例も載っています。
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