古文の動詞の活用は、四段・上一段・上二段・下一段・下二段・カ行変格(カ変)・サ行変格(サ変)・ナ行変格(ナ変)・ラ行変格(ラ変)の9種類です。見分け方の一つは、所属する語が少ない上一段・下一段・カ変・サ変・ナ変・ラ変の6種類を先に覚えてしまい、残りの動詞に打消の助動詞「ず」を付けて判定することです。「ず」の直前がア段なら四段、イ段なら上二段、エ段なら下二段になります。
動詞の活用9種類の全体像
活用の種類は、規則的に変化する正格活用(5種類)と、変則的に変化する変格活用(4種類)に分かれます。
| 分類 | 活用の種類 | 活用語尾が変化する音 | 見分け方 |
|---|---|---|---|
| 正格活用 | 四段活用 | ア・イ・ウ・エの4段 | 「ず」で判定 |
| 正格活用 | 上一段活用 | イ段だけ | 暗記(10語ほどと、その複合語) |
| 正格活用 | 上二段活用 | イ・ウの2段 | 「ず」で判定 |
| 正格活用 | 下一段活用 | エ段だけ | 暗記(「蹴る」1語) |
| 正格活用 | 下二段活用 | ウ・エの2段 | 「ず」で判定(四段に次いで多い) |
| 変格活用 | カ行変格活用 | カ行のキ・ク・コ | 暗記(「来」1語) |
| 変格活用 | サ行変格活用 | サ行のシ・ス・セ | 暗記(「す」「おはす」と複合語) |
| 変格活用 | ナ行変格活用 | ナ行のナ・ニ・ヌ・ネ | 暗記(「死ぬ」「往ぬ」2語) |
| 変格活用 | ラ行変格活用 | ラ行のラ・リ・ル・レ | 暗記(「あり」「をり」「はべり」「いまそかり」) |
数が多い四段・上二段・下二段は、一語ずつ覚えるのではなく「ず」で判定します。逆に、残りの6種類は所属する語がごく少ないので、先に覚えてしまうほうが速いです。
まず暗記する6種類の動詞
| 活用の種類 | 所属する語 | 覚え方・注意 |
|---|---|---|
| 上一段 | 干る・射る・鋳る・着る・似る・煮る・見る・居る・率る | 頭の音で「ひ・い・き・に・み・ゐ・る」=「ひいきにみゐる」。顧みる・試みる・用ゐる・率ゐる(ひきゐる)などの複合語も上一段 |
| 下一段 | 蹴る | この1語だけ |
| カ変 | 来(く) | 「来」と、その複合動詞だけ |
| サ変 | す・おはす | 「す」は名詞や漢語と結び付いて「恋す」「心す」「案ず」「御覧ず」などの複合動詞を作る。濁って「〜ず」になってもサ変 |
| ナ変 | 死ぬ・往ぬ(去ぬ) | この2語だけ |
| ラ変 | あり・をり・はべり・いまそかり(いますがり) | 終止形がイ段の「り」で終わるのはこのグループだけ。「あり」を含む「かかり」「さり」「しかり」も同じ活用 |
「ひいきにみゐる」の9語は、どれも「見(み)」「着(き)」のように未然形・連用形が1音節です。語幹と活用語尾を分けられないので、学校文法では「語幹と語尾の区別がない」と説明します。
行まで問われやすい動詞
活用の種類だけでなく「何行に活用するか」を問われるのが、ア行・ヤ行・ワ行の動詞です。仮名遣いのミス(「植え」と書いてしまうなど)にも直結するので、次の語は形ごと覚えておきます。
| 語 | 活用の種類 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 得(う) | ア行下二段 | え | え | う | うる | うれ | えよ |
| 植う | ワ行下二段 | 植ゑ | 植ゑ | 植う | 植うる | 植うれ | 植ゑよ |
| 老ゆ | ヤ行上二段 | 老い | 老い | 老ゆ | 老ゆる | 老ゆれ | 老いよ |
| 射る | ヤ行上一段 | い | い | いる | いる | いれ | いよ |
| 居る | ワ行上一段 | ゐ | ゐ | ゐる | ゐる | ゐれ | ゐよ |
- ア行に活用する動詞は、下二段の「得(う)」と、その複合語だけです。
- ワ行下二段は「植う」「飢う」「据う」の3語です。
- ヤ行上二段は、ふつう「老ゆ」「悔ゆ」「報ゆ」の3語を覚えます(資料によっては「臥ゆ」を加えて4語とします)。
残りの動詞は「ず」を付けて見分ける
6種類の暗記リストに入っていない動詞は、次の手順で判定します。
- 暗記リスト(上一段・下一段・カ変・サ変・ナ変・ラ変)に入っていないか確認する
- 動詞に打消の助動詞「ず」を付けて、未然形を作る
- 「ず」の直前の音が何段かで判定する
| 「ず」の直前の音 | 活用の種類 | 例 |
|---|---|---|
| ア段 | 四段活用 | 書く → 書かず、飽く → 飽かず |
| イ段 | 上二段活用 | 起く → 起きず、落つ → 落ちず |
| エ段 | 下二段活用 | 受く → 受けず、捨つ → 捨てず |
現代語の感覚で間違えやすい動詞
「ず」を付けるときは、必ず古語の形で考えます。現代語の活用に引っぱられると、次の語でつまずきます。
現代語の下一段動詞(受ける・捨てるなど)は、古語ではほぼ下二段です。現代語の上一段動詞(起きる・落ちるなど)も、古語では多くが上二段(起く・落つ)になります。
動詞9種類の活用表
代表的な語で、6つの活用形をまとめました。語幹と語尾を分けられない語は、語幹の欄を「なし」としています。
| 活用の種類 | 例語 | 語幹 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 四段 | 書く | 書 | か | き | く | く | け | け |
| 上一段 | 見る | なし | み | み | みる | みる | みれ | みよ |
| 上二段 | 起く | 起 | き | き | く | くる | くれ | きよ |
| 下一段 | 蹴る | なし | け | け | ける | ける | けれ | けよ |
| 下二段 | 受く | 受 | け | け | く | くる | くれ | けよ |
| カ変 | 来 | なし | こ | き | く | くる | くれ | こ(こよ) |
| サ変 | す | なし | せ | し | す | する | すれ | せよ |
| ナ変 | 死ぬ | 死 | な | に | ぬ | ぬる | ぬれ | ね |
| ラ変 | あり | あ | ら | り | り | る | れ | れ |
表を覚えるときの注意点です。
- カ変の命令形は「こ」と「こよ」の両方があります。平安時代までは「こ」、鎌倉時代以降は「こよ」の例が多いとされ、多くの表で「こ(こよ)」と併記します。
- 語幹と語尾の区別がないのは、上一段・下一段・カ変・サ変のほか、下二段の「得(う)」「経(ふ)」「寝(ぬ)」などの1音節の語です。
- 二段活用の連体形・已然形・命令形は、それぞれ「る」「れ」「よ」が付く形になります(起くる・起くれ・起きよ)。上一段・下一段も同じく「る・れ・よ」が付きます。
- ラ変は、終止形が「り」(イ段)で終わる点が四段と違います。
活用形ごとの主な使われ方
どの活用形に何が続くかを知っておくと、文中の動詞の活用形を特定しやすくなります。
| 活用形 | 主な使われ方 | 四段「書く」の例 |
|---|---|---|
| 未然形 | 「ず」「む」や、仮定の「ば」が付く | 書かず・書かむ・書かば |
| 連用形 | 用言や「けり」「き」「たり」「て」などに続く | 書きけり・書きて |
| 終止形 | 文を言い切る。「べし」「らむ」などが付く | 書く。・書くべし |
| 連体形 | 体言に続く。係助詞「ぞ・なむ・や・か」の結びになる | 書くこと |
| 已然形 | 確定の「ば」、「ど」「ども」が付く。係助詞「こそ」の結びになる | 書けば・書けども |
| 命令形 | 命令して言い切る | 書け |
未然形に付く「ば」は「もし〜ならば」の仮定、已然形に付く「ば」は「〜ので・〜と」の確定条件です。形は似ていても意味が変わるので、活用形の特定が読解に直結します。
活用表を覚えたら、古文 活用ドリルで「活用の種類×活用形」を選択式で反復できます。間違えた活用を、表に戻って確かめながら練習できます。紙に書いて確かめたい場合は、古文 活用表プリントで、9種類の表を穴埋め・答えつき・一覧表にして印刷できます。
実際の古文で確かめる
有名な冒頭部分で、動詞の活用の種類と活用形を確認してみます。本文は Wikisource・青空文庫などの公開本文をもとにし、『竹取物語』と『古今和歌集』は読みやすいように句読点・漢字・濁点を補っています。
今は昔、竹取の翁といふものありけり。野山にまじりて竹を取りつつ、よろづのことに使ひけり。(『竹取物語』冒頭)
- いふ:ハ行四段「いふ」の連体形(体言「もの」に続く)
- あり:ラ変「あり」の連用形(連用形に付く助動詞「けり」が続く)
- まじり:ラ行四段「まじる」の連用形
- 取り:ラ行四段「取る」の連用形
- 使ひ:ハ行四段「使ふ」の連用形
行く川のながれは絶えずして、しかも本の水にあらず。よどみに浮ぶうたかたは、かつ消えかつ結びて久しくとゞまることなし。(『方丈記』冒頭、青空文庫の本文による。教科書に多い大福光寺本では「久しくとどまりたるためしなし」)
- 行く:カ行四段「行く」の連体形
- 絶え:ヤ行下二段「絶ゆ」の未然形(「ず」が付く)
- あら:ラ変「あり」の未然形(「ず」が付く)
- 浮ぶ:バ行四段「浮ぶ」の連体形
- 消え:ヤ行下二段「消ゆ」の連用形
- 結び:バ行四段「結ぶ」の連用形
- とゞまる:ラ行四段「とどまる」の連体形
秋来ぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞおどろかれぬる(『古今和歌集』巻四・秋歌上、藤原敏行)
- 来:カ変「来」の連用形で、「き」と読みます。完了の助動詞「ぬ」は連用形に付くからです。「こぬ」と読むと打消になり、意味が逆になります。
- 見え:ヤ行下二段「見ゆ」の未然形(打消「ず」の已然形「ね」が付く)
- おどろか:カ行四段「おどろく」の未然形(助動詞「る」が付く)
まいて雁などの列ねたるがいと小さく見ゆるは、いとをかし。(『枕草子』第一段)
- 列ね:ナ行下二段「列ぬ(つらぬ)」の連用形
- 見ゆる:ヤ行下二段「見ゆ」の連体形(「は」の前で体言のように働く)
練習問題(10問)
答えは各問の「答え」を開いて確認してください。
問1. 「着る」の活用の種類を答えなさい。
答え
上一段活用(カ行上一段)
「ひいきにみゐる」の「き」です。暗記リストに入っている語なので、「ず」を付けて判定する必要はありません。
問2. 「落つ」の活用の種類を答えなさい。
答え
上二段活用(タ行上二段)
暗記リストにないので「ず」を付けます。「落ちず」で、直前の「ち」はイ段です。
問3. 「捨つ」の活用の種類を答えなさい。
答え
下二段活用(タ行下二段)
「捨てず」で、直前の「て」はエ段です。現代語「捨てる」(下一段)は、古語ではほぼ下二段になります。
問4. 「飽く」の活用の種類を答えなさい。
答え
四段活用(カ行四段)
古語では「飽かず」で、直前がア段です。現代語の「飽きる」(上一段)に引っぱられて上二段と答えないように注意します。
問5. 「恨む」の活用の種類を答えなさい。
答え
上二段活用(マ行上二段)
古語では「恨みず」になります。現代語の「恨まない」(五段)とは活用が違います。
問6. 次のうち、ナ行変格活用の動詞をすべて選びなさい。「死ぬ」「寝(い)ぬ」「往ぬ」「尋ぬ」
答え
死ぬ・往ぬ
ナ変はこの2語だけです。「寝ぬ」「尋ぬ」はどちらも下二段活用です。
問7. 次のうち、ラ行変格活用の動詞をすべて選びなさい。「あり」「をり」「居(ゐ)る」「散る」
答え
あり・をり
「居る」は上一段(ワ行)、「散る」は四段です。終止形が「り」で終わるかどうかがラ変の目印です。
問8. 「植う」の連用形を、歴史的仮名遣いで答えなさい。
答え
植ゑ
「植う」はワ行下二段活用なので、未然形・連用形は「ゑ」になります。「植え」とは書きません。
問9. 「秋来ぬと」の「来」の読み方と活用形を答えなさい。
答え
読み方は「き」、カ変「来」の連用形
下の「ぬ」は完了の助動詞で、連用形に付きます。カ変の連用形は「き」なので「きぬ」と読み、「秋が来た」という意味になります。
問10. 「いと小さく見ゆるは」の「見ゆる」の活用の種類と活用形を答えなさい。
答え
ヤ行下二段活用「見ゆ」の連体形
「見ゆ」は「見えず」とエ段になるので下二段です。上一段の「見る」とは別の動詞です。
まとめ
- 古文の動詞の活用は、正格5種類(四段・上一段・上二段・下一段・下二段)と変格4種類(カ変・サ変・ナ変・ラ変)の9種類
- 上一段(ひいきにみゐる)・下一段(蹴る)・カ変(来)・サ変(す・おはす)・ナ変(死ぬ・往ぬ)・ラ変(あり・をり・はべり・いまそかり)は先に暗記
- 残りは「ず」を付けて、直前がア段なら四段、イ段なら上二段、エ段なら下二段
- 「飽く」「足る」(四段)や「恨む」(上二段)など、現代語と活用が違う語に注意
- 「得」(ア行)、「植う・飢う・据う」(ワ行下二段)、「老ゆ・悔ゆ・報ゆ」(ヤ行上二段)は行まで覚える
動詞の活用表が固まると、助動詞の接続(「未然形に付く」「連用形に付く」など)が一気に読めるようになります。次は助動詞の活用表と接続に進むのがおすすめです。
関連記事・ツール
- 古文の助動詞 活用表と接続一覧|意味・覚え方と練習問題
- 古文の形容詞 活用表|ク活用・シク活用とカリ活用の見分け方
- 古文の形容動詞 活用表|ナリ活用・タリ活用と見分け方
- 古文 活用ドリル(動詞9種・形容詞・形容動詞の活用形を反復)
- 古文 活用表プリント(穴埋め・答えつき・一覧表を印刷)
- 全教科 暗記ドリル(古文単語・古文助動詞のデッキを収録)
- 古文 読解ドリル(四択・口語訳つき)
- 学習補助ツール一覧

