古文「なり」の識別|断定・伝聞推定・形容動詞・動詞の見分け方

古文の「なり」は上の語の形で見分けます。体言・連体形なら断定、終止形(ラ変型は連体形)や撥音便のあとなら伝聞推定、状態を表す語と1語なら形容動詞、「〜になる」の変化なら動詞。早見表、土佐日記・徒然草・更級日記の例文、練習問題10問つき。

#古文#古典文法#助動詞#なりの識別

古文の「なり」は、「なり」の上にある語の形で見分けます。「〜になる」という変化なら動詞「なる」、「静かなり」のように状態を表す1語なら形容動詞、残る助動詞は、上が体言・連体形なら断定、終止形(ラ変型の語は連体形)や撥音便のあとなら伝聞推定です。

「なり」の識別 早見表

「なり」の正体上に来る形意味・訳例(実際の古文)
断定の助動詞体言・連体形(助詞「ば」などにも付く)〜である/〜にある(存在)女もしてみむとてするなり(『土佐日記』)
伝聞推定の助動詞終止形(ラ変型の語は連体形)。撥音便のあと〜そうだ・〜という(伝聞)/〜ようだ(推定)男もすなる日記(『土佐日記』)
形容動詞の活用語尾状態を表す語幹(静か・あはれ・〜げ など)〜だ(状態・性質)飛び急ぐさへあはれなり(『枕草子』)
動詞「なる」の連用形「〜に」「〜く」「〜と」など〜になる(変化)山の端いと近うなりたるに(『枕草子』)

活用の形も見分ける材料になります。

語未然形連用形終止形連体形已然形命令形活用の型
断定の助動詞「なり」ならなり・になりなるなれなれ形容動詞ナリ活用型
伝聞推定の助動詞「なり」○(なり)なりなるなれ○ラ変型
形容動詞「静かなり」の語尾ならなり・になりなるなれなれナリ活用
動詞「なる」(成る)ならなりなるなるなれなれラ行四段

「なら」「なり」「なれ」の形は断定・形容動詞・動詞のどれにもあり、形だけでは決まりません。上の語とのつながりと意味で見分けます。伝聞推定の活用表は、辞典によって欄の立て方が違います(後述)。

見分ける手順

次の順で確かめると、4種類を取り違えにくくなります。

  1. 「なる」に置き換えて、変化を表すか:「〜になり」「〜くなり」「〜となり」で「〜になる」という意味なら、動詞「なる」の連用形です。
  2. 上の語と合わせて、状態を表す1語か:「静かなり」「あはれなり」「きよげなり」のように、「なり」まで含めて性質・状態を表すなら形容動詞です。
  3. 上が撥音便(「ん」が書かれない形を含む)か:「あなり」「ざなり」「かなり」のように、撥音便のあとに付く「なり」は伝聞推定です。
  4. 上の語の活用形は何か:体言・連体形なら断定、終止形なら伝聞推定です。ラ変型に活用する語(あり・をり、「けり」「たり」、形容詞の補助活用など)には、伝聞推定の「なり」も連体形に付きます。
  5. 接続で決まらないときは文脈:上が四段・上一段・下一段動詞のように終止形と連体形が同じ形の場合は、音や声を根拠にしていれば推定、人の話やうわさなら伝聞、どちらでもなければ断定と判断します。

断定の助動詞「なり」

格助詞「に」とラ変動詞「あり」が融合してできた助動詞です。活用は「なら・なり(に)・なり・なる・なれ・なれ」で、形容動詞のナリ活用と同じ型です。

  • 接続:体言、活用語の連体形に付きます。「〜ばなり」のように助詞に付くこともあります。
  • 意味:断定(〜である・〜だ)と、場所や方角を表す語に付く存在(〜にある・〜にいる)の2つが基本です。存在の意味は、主に連体形「なる」で現れます(「春日なる三笠の山」=春日にある三笠の山)。
  • 形容詞に付くとき:本活用の連体形に付いて「高きなり」の形になります(作例)。補助活用の「高かるなり」は、下で説明する伝聞推定です。

辞典は、このほかにも用法を立てています。デジタル大辞泉は、『土佐日記』の「帰らぬ人のあればなりけり」のように根拠を示して「…のである・…からである」と説明する用法や、漢文訓読から出た「顔回なる者」(〜という)を挙げています。

連用形には「なり」のほか「に」があり、「にあり」「にや」「にこそあれ」のように、下に「あり」や係助詞を伴って使われます。断定の助動詞のほかの用法や、接続の一覧は、古文の助動詞 活用表と接続一覧で整理しています。

伝聞推定の助動詞「なり」

音や声を表す「ね」「な」に「あり」が付いてできたとみる説が有力で、耳で聞いたことにもとづく判断を表します。活用は「○・(なり)・なり・なる・なれ・○」のラ変型です。

  • 接続:活用語の終止形に付きます。ラ変型に活用する語には連体形に付きます(「あるなり」「多かるなり」)。
  • 伝聞:人から聞いた話・うわさにもとづいて「〜そうだ・〜という」。
  • 推定:その場で聞こえる音や声にもとづいて「〜ようだ・〜らしい」。
断定の「なり」
伝聞推定の「なり」
上に来る形
断定の「なり」体言・連体形
伝聞推定の「なり」終止形(ラ変型の語は連体形)
成り立ち
断定の「なり」格助詞「に」+ラ変「あり」
伝聞推定の「なり」音・声に関わる語+「あり」とみる説が有力
活用
断定の「なり」なら・なり(に)・なり・なる・なれ・なれ
伝聞推定の「なり」○・(なり)・なり・なる・なれ・○
意味
断定の「なり」断定(〜である)・存在(〜にある)
伝聞推定の「なり」伝聞(〜そうだ)・推定(〜ようだ)
形容詞に付く形
断定の「なり」高きなり(本活用の連体形)
伝聞推定の「なり」高かるなり・高かなり(補助活用の連体形)
断定と伝聞推定の「なり」(形容詞の例は作例)

伝聞推定の「なり」は終止形接続の助動詞なので、助動詞の接続一覧の終止形接続のグループ(らむ・べし・らし・めり・まじ・なり)と一緒に覚えると、「ラ変型には連体形」という例外もまとめて押さえられます。

撥音便+「なり」は伝聞推定

ラ変型の語の連体形「〜る」は、下に伝聞推定の「なり」や推定の「めり」などが続くと撥音便になり、「〜ん」となることがあります。この「ん」は書かれないことが多く、次のような形で出てきます。

書かれた形もとの形上の語
あなり・あんなりあるなりラ変動詞「あり」
ざなり・ざんなりざるなり打消の助動詞「ず」(補助活用の連体形「ざる」)
多かなり・多かんなり多かるなり形容詞「多し」(補助活用の連体形「多かる」)
ななり・なんなりなるなり(なりなり)断定の助動詞「なり」
静かななり・静かなんなり静かなるなり形容動詞「静かなり」

撥音便のあとの「なり」は、学校文法では伝聞推定と判断します。「あるなり」の形のままなら、「ある」は連体形なので断定とも伝聞推定とも読め、文脈で決めることになります。撥音便になっている(または「ん」が書かれていない)ことに気づけるかが、識別の分かれ目です。

「ななり」は、上の「な」が断定の「なり」、下の「なり」が伝聞推定です。デジタル大辞泉は『源氏物語』宿木の「人づてに承りし事の筋ななり」を例に挙げ、「…であるようだ・…であるということだ」と説明しています。

形容動詞ナリ活用の活用語尾

「静かなり」「あはれなり」「さらなり」の「なり」は、形容動詞の活用語尾です。「なり」だけを取り出すことはせず、全体を1語として扱います。

形容動詞と、名詞+断定の「なり」は、「なり」の上の部分が名詞として使えるかで見分けます。

  • 「春が来る」「春を待つ」のように、格助詞「が」「を」などを付けて主語や目的語にできれば名詞です。「春なり」(作例)の「なり」は断定の助動詞です。
  • 「静か」「あはれ」は、格助詞を付けて主語にする使い方がしにくく、「なり」まで含めて状態を表します。日本大百科全書も、名詞と形容動詞の語幹とでは、格助詞が付くかどうかなど用法に差があると説明しています。
  • 「〜か」(静か・ほのか)、「〜やか」(たをやか)、「〜らか」(うららか)、「〜げ」(きよげ・うつくしげ)が付いた語は、形容動詞の語幹になることが多い語です。
  • 「いと」などの程度を表す語で修飾できるかも、手がかりの一つです(いと静かなり)。当サイトの整理で、決め手ではなく目安です。

形容動詞の活用表と、形容詞との違いは古文の形容動詞 活用表(あはれなり・静かなり)|ナリ活用・タリ活用と見分け方で整理しています。

動詞「なる」の連用形

「成る」はラ行四段活用の動詞で、連用形が「なり」です。「〜になる」「〜となる」「〜くなる」のように、前とは違う状態に変わることを表します。

  • 「猫またになりて」(『徒然草』第八十九段):「〜に」のあとで「猫またに変わって」
  • 「山の端いと近うなりたるに」(『枕草子』第一段):「近う」は「近く」のウ音便で、「近くなった」という変化
  • 「なくなり給ひぬなり」(『更級日記』)の「なくなり」:デジタル大辞泉は「なくなる(無くなる・亡くなる)」を1語の動詞として立てています。形容詞「なし」の連用形+動詞「なる」と分けて説明する教材もありますが、どちらにしても助動詞ではありません

動詞の「なり」は、上に助詞「に」「と」や形容詞・形容動詞の連用形があることが多く、置き換えて「〜になる」と訳せるかで確かめられます。まれに「鳴る」「生る(実る)」などの別の動詞のこともあるので、文脈も見てください。動詞の活用の種類は古文の動詞 活用の種類9つと見分け方にまとめています。

実際の古文で確かめる

有名な章段で、「なり」を識別します。本文は Wikisource の公開本文をもとにし、旧字体を新字体に改め、校注者の注記(〔 〕内)を省きました。くり返し記号は仮名に開き、和歌は読みやすいように漢字と濁点を補っています。

男もすなる日記といふものを、女もしてみむとてするなり。(『土佐日記』冒頭)

  • すなるの「なる」:サ変「す」の終止形に付くので伝聞推定(伝聞)の連体形。「男も書くという日記」
  • するなりの「なり」:サ変「す」の連体形「する」に付くので断定の終止形。「書くのである」

「奥山に、猫またと云ふものありて、人を食ふなる。」と人のいひけるに、「山ならねども、これらにも、猫の経あがりて、猫またになりて、人とる事はあなるものを。」といふものありけるを(『徒然草』第八十九段)

  • 食ふなるの「なる」:四段「食ふ」は終止形と連体形が同じ形なので、接続では決まりません。「と人のいひけるに」とあり、人から聞いたうわさなので伝聞の連体形です。「人を食うそうだ」
  • 山ならの「なら」:名詞「山」に付く断定の未然形(「山ではないけれども」)
  • 猫またになりての「なり」:動詞「なる」の連用形
  • あなるの「なる」:ラ変「あり」の連体形「ある」が撥音便で「あん」となり、「ん」が書かれていない形に付く伝聞推定の連体形。「(人をとることは)あるというのに」

また聞けば、侍従大納言の御女、なくなり給ひぬなり。殿の中将のおぼしなげくなる様、我が物の悲しき折なれば、いみじく哀なりと聞く。(『更級日記』)

  • ぬなりの「なり」:完了「ぬ」の終止形に付くので伝聞推定。「また聞けば」とあるので伝聞で、「亡くなられたそうだ」。デジタル大辞泉も伝聞の用例に挙げています
  • おぼしなげくなるの「なる」:四段「おぼしなげく」に付くので接続では決まりませんが、文末の「と聞く」から伝聞と読みます
  • 折なればの「なれ」:名詞「折」に付く断定の已然形
  • 哀なり:形容動詞「あはれなり」の終止形

かたはらなる所に、先おふ車とまりて、「荻の葉、荻の葉」と呼ばすれど、答へざンなり。呼びわづらひて、笛をいとをかしく吹きすまして過ぎぬなり。(『更級日記』)

  • かたはらなるの「なる」:場所を表す名詞「かたはら」に付く断定の連体形で、存在の意味。「すぐそばにある所」
  • ざンなりの「なり」:打消「ず」の連体形「ざる」の撥音便「ざん」に付く伝聞推定。この本文は撥音を「ン」と書き添えていますが、「ざなり」と書かれる形です。呼ぶ声に返事が聞こえないので推定で「答えないようだ」
  • 過ぎぬなりの「なり」:「ぬ」の終止形に付く伝聞推定。笛の音が遠ざかるのを聞いているので推定で「通り過ぎて行ったようだ」。デジタル大辞泉は推定の用例に挙げています

秋は夕暮れ。夕日のさして、山の端いと近うなりたるに、烏の寝どころへ行くとて、三つ四つ、二つ三つなど、飛び急ぐさへあはれなり。(『枕草子』第一段)

  • なり(近うなりたる):動詞「なる」の連用形。「近くなった」という変化
  • あはれなり:形容動詞「あはれなり」の終止形。同じ段の「月の頃はさらなり」の「さらなり」も形容動詞です

秋の野に人まつ虫の声すなり我かと行きていざとぶらはむ(『古今和歌集』巻四・秋歌上、よみ人しらず)

  • すなりの「なり」:サ変「す」の終止形に付く伝聞推定。松虫の「声」を聞いているので推定で「声がするようだ」

天の原ふりさけ見れば春日なるみかさの山に出でし月かも(『小倉百人一首』7番、阿倍仲麻呂)

  • 春日なるの「なる」:地名「春日」に付く断定の連体形で、存在の意味。「春日にある三笠の山」

都へとおもふもものゝかなしきはかへらぬ人のあればなりけり(『土佐日記』)

  • なり:接続助詞「ば」に付く断定の連用形(下に「けり」)。「(帰らない人がいる)からなのだなあ」と理由を説明しています。デジタル大辞泉はこの歌を「思ふを物の悲しきは」の本文で引いています

撥音便の例をもう一つ挙げます。『竹取物語』の終わり近く、帝が不死の薬を焼かせる場面で、Wikisource の國民文庫本は「駿河の國にあンなる山の巓(いたゞき)に」と撥音を書き添えています。精選版 日本国語大辞典は同じ箇所を「するがの国にあなる山のいただきに」と、「ん」のない形で引いています。どちらも、ラ変「あり」の撥音便に付く伝聞推定の「なり」で、「駿河の国にあるという山」です。

資料で分かれる点

  • 伝聞推定の「なり」の活用表:デジタル大辞泉は「○・(なり)・なり・なる・なれ・○」とし、未然形と命令形を立てません。精選版 日本国語大辞典は「なら・なり・なり・なる・なれ・〇」と、未然形「なら」も載せています。この記事と当サイトの助動詞の記事は、前者の表で示しています。
  • 「あ(ん)なり」の「あん」:学校文法では、ラ変「あり」の連体形「ある」が撥音便になったものと説明します。精選版 日本国語大辞典は、上代には「ありなり」と終止形に付いた例があり、平安時代の例はほとんど「あなり」と書かれていて、「あるなり」と書かれた確証は乏しい、と記しています。後世には連体形に付く例も現れる、とも書いています。識別問題では、どちらの説明でも「撥音便+なり=伝聞推定」という判断は変わりません。
  • 「ななり」の上の「な」:デジタル大辞泉は断定の「なり」の連体形「なる」の音変化とし、精選版 日本国語大辞典は終止形「なり」に付いたものとみたうえで、連体形とみる考え方もあると記しています。
  • 伝聞推定の意味の分け方:学校文法では「伝聞」と「推定」の2つに分けるのが一般的です。デジタル大辞泉は「音や声が聞こえる」「伝聞」「音・声やうわさなどに基づく推定」に分け、近世の「詠嘆」の用法も挙げています。精選版 日本国語大辞典は、近世以来この「なり」は詠嘆ととらえられてきたが、近年は「伝聞推定」と説くのが一般的になった、と説明しています。
  • 断定の「なり」の意味:学校文法では「断定・存在」の2つで覚えますが、辞典は「…のである」と事情を説明する用法や、「〜という」の用法なども立てています。
  • 断定の連用形「に」:「にあり」「にや」の「に」は、断定の「なり」の連用形とするのが普通ですが、助詞とみる説もあります(精選版 日本国語大辞典)。
  • 形容動詞を1語とみるか:形容動詞を品詞として認めず、「静か」を体言、「なり」を断定の助動詞とみる学説もあります。学校文法では「静かなり」全体を1語の形容動詞として扱います。

定期テストや入試の解答は、授業で使う文法書の整理に合わせてください。

練習問題(10問)

答えは各問の「答え」を開いて確認してください。問1〜9は上で確かめた実際の古文、問10は作例です。

問1. 「男もすなる日記」の「なる」を文法的に説明しなさい。

答え

伝聞推定の助動詞「なり」の連体形(伝聞)

上の「す」はサ変動詞の終止形です。終止形に付くので伝聞推定で、「男も書くという日記」と訳します。

問2. 「女もしてみむとてするなり」の「なり」を文法的に説明しなさい。

答え

断定の助動詞「なり」の終止形

上の「する」はサ変動詞「す」の連体形です。連体形に付くので断定で、「書いてみようと思って書くのである」と訳します。

問3. 「山の端いと近うなりたるに」の「なり」を識別しなさい。

答え

ラ行四段動詞「なる」の連用形

「近う」は形容詞「近し」の連用形「近く」のウ音便です。「近くなった」という変化を表すので、助動詞ではなく動詞です。

問4. 「飛び急ぐさへあはれなり」の「なり」を識別しなさい。

答え

ナリ活用の形容動詞「あはれなり」の終止形の活用語尾

「あはれ」と「なり」で1語の形容動詞です。「しみじみと趣深い」という状態を表しています。

問5. 「春日なるみかさの山」の「なる」を、意味も含めて説明しなさい。

答え

断定の助動詞「なり」の連体形。意味は存在(〜にある)

地名「春日」に付いて、「春日にある三笠の山」という意味になります。場所を表す語+「なる」は、存在の意味になることが多い形です。

問6. 「奥山に、猫またと云ふものありて、人を食ふなる。」と人のいひけるに、の「なる」を識別し、そう判断した理由を答えなさい。

答え

伝聞推定の助動詞「なり」の連体形(伝聞)

「食ふ」は四段動詞なので、終止形と連体形が同じ形で、接続からは断定か伝聞推定かを決められません。直後に「と人のいひけるに」とあり、人から聞いたうわさを伝えているので伝聞と判断します。「人を食うそうだ」と訳します。

問7. 「人とる事はあなるものを」の「あなる」を文法的に説明しなさい。

答え

ラ変動詞「あり」の連体形「ある」の撥音便「あん」の「ん」の無表記+伝聞推定の助動詞「なり」の連体形

「あるなる」が「あんなる」となり、「ん」が書かれずに「あなる」になった形です。撥音便のあとの「なり」なので伝聞推定です。

問8. 「笛をいとをかしく吹きすまして過ぎぬなり」の「なり」を識別し、訳しなさい。

答え

伝聞推定の助動詞「なり」の終止形(推定)。「(笛を)たいそう趣深く吹き澄まして通り過ぎて行ったようだ」

上の「ぬ」は完了の助動詞の終止形です(連体形なら「ぬる」)。終止形に付くので伝聞推定で、笛の音を聞いて判断しているので推定です。

問9. 「山ならねども」の「なら」を文法的に説明しなさい。

答え

断定の助動詞「なり」の未然形

名詞「山」に付いています。下の「ね」は打消の助動詞「ず」の已然形で、「山ではないけれども」と訳します。

問10. 次の作例の「なり」を、それぞれ識別しなさい。(a)「この山、高きなり」(b)「その山、高かなり」

答え

(a)断定の助動詞「なり」 (b)伝聞推定の助動詞「なり」

形容詞に断定の「なり」が付くときは、本活用の連体形「高き」に付きます。伝聞推定の「なり」は補助活用の連体形「高かる」に付き、これが撥音便で「高かん」となり、「ん」が書かれずに「高かなり」となります。(a)は「高いのである」、(b)は「高いそうだ・高いようだ」です。

まとめ

  • 「なり」は、断定の助動詞・伝聞推定の助動詞・形容動詞の活用語尾・動詞「なる」の連用形の4種類を見分ける
  • 「〜になる」と変化を表せば動詞、「静かなり」のように状態を表す1語なら形容動詞
  • 助動詞は接続で見分ける。体言・連体形なら断定、終止形(ラ変型は連体形)なら伝聞推定
  • 撥音便(無表記を含む)+なりは伝聞推定(あなり・ざなり・多かなり・ななり)
  • 終止形と連体形が同じ形のときは文脈で判断する。音・声なら推定、人の話・うわさなら伝聞
  • 断定の「なり」は、場所を表す語に付くと存在(〜にある)の意味になる

「なり」の識別は、助動詞の接続を覚えているかどうかで決まります。接続があいまいなときは、先に助動詞の活用表を見直すと解きやすくなります。

関連記事

参考資料

よくある質問

5件
古文の「なり」の識別は、何から確かめればよいですか?
まず「なる」に置き換えて「〜になる」「〜くなる」という変化の意味になるかを見ます。なれば動詞「なる」の連用形です。次に「静かなり」「あはれなり」のように、上の語と合わせて状態を表す1語なら形容動詞です。残ったものは助動詞なので、上の語の形を見て、体言・連体形なら断定、終止形(ラ変型の語は連体形)なら伝聞推定と判断します。
断定の「なり」と伝聞推定の「なり」はどう見分けますか?
接続で見分けます。体言や連体形に付けば断定、終止形に付けば伝聞推定です。『土佐日記』冒頭の「男もすなる日記」はサ変「す」の終止形に付くので伝聞推定、「女もしてみむとてするなり」は連体形「する」に付くので断定です。四段動詞のように終止形と連体形が同じ形のときは、音や声を根拠にしていれば推定、人の話やうわさなら伝聞、どちらでもなければ断定と、文脈で判断します。
「あなり」「ざなり」の「なり」は、なぜ伝聞推定になるのですか?
「あなり」は「あるなり」が撥音便で「あんなり」になり、「ん」が書かれなかった形です。「ざなり」も打消「ず」の連体形「ざる」が「ざん」となった形です。学校文法では、このように撥音便(「ん」が書かれない形を含む)になった語に付く「なり」は、伝聞推定と判断します。「あん」を連体形「ある」の音便とみる説明には、辞典に異論も記されています。
形容動詞の「なり」と、名詞に付いた断定の「なり」はどう見分けますか?
「なり」の上の部分が名詞として使えるかを確かめます。「春が来る」のように「が」「を」などの格助詞を付けて主語や目的語にできれば名詞なので、「春なり」の「なり」は断定です。「静か」「あはれ」のように格助詞を付けて使いにくく、「なり」まで含めて状態を表す語は形容動詞です。「〜か」「〜やか」「〜らか」「〜げ」の付いた語も、形容動詞の語幹になることが多い語です。
伝聞推定の「なり」は、伝聞と推定をどう訳し分けますか?
人から聞いた話やうわさを根拠にしているときは伝聞で「〜そうだ・〜という」、その場で聞こえる音や声を根拠にしているときは推定で「〜ようだ」と訳します。「鳴く」「声す」「笛」など音に関わる語があれば推定、「聞けば」「人の言ひける」など話を聞いた文脈なら伝聞が目安です。辞典によっては、「音や声が聞こえる」という意味を別に立てています。
この記事をシェア: Xで共有

次に読む